Academic English / Research Communication

英語と学界|研究を伝える力と、英語による負担を考える

最終更新:2026年10月1日

論文、学会発表、共同研究に必要な英語を具体的な課題から考えます。英語出版の負担と非英語文献の問題を、研究の対象範囲とともに紹介します。

研究を英語で伝える力と、研究そのものの価値を分ける

研究の内容が優れていても、英語で説明する段階で伝わりにくくなることがあります。そこで必要なのは、問い、方法、結果、限界を相手が正確に理解できるようにする支援です。同時に、その追加の負担を研究者個人だけに任せてよいのかも考える必要があります。

自然な英文であることと、研究上の主張が妥当であることは別です。流暢な説明でも根拠が不足する場合はありますし、不自然な一文があるだけで研究の価値が失われるわけでもありません。学術英語の指導では、この二つを混同しないことが出発点になります。

「英語力全体を上げる」という大きな目標を、目の前の仕事へ分解しましょう。「この比較から何が言えるのかを説明する」なら、何を練習し、どこを直すかが具体的になります。

英語で学術論文を読み執筆する研究者

文献を読む前に、探している答えを決める

文献調査では、研究上の問いと検索語を記録します。題名と要旨から関連性を判断し、必要な方法、結果、限界へ進みます。すべての論文を最初から最後まで同じ密度で読むことが、常に最も役立つ読み方とは限りません。

読んだ内容は「何を行ったか」「何が得られたか」「著者はどう解釈したか」に分け、さらに「確認が必要な点」を加えると整理できます。翻訳ツールを使った場合も、重要な主張は原文と照合します。否定、条件、専門用語、断定を避ける表現が変わると、研究の意味まで変わるからです。

検索する言語も調査方法の一部です。対象地域や実践について英語以外の文献がありそうなら、それをどう探し、評価するかを決めます。英語だけで検索した結果を、その分野の全知識とみなさないようにします。

英文を磨く前に、主張を確かめる

次は架空の練習例です。「このプログラムは学生の自信を高めた」と書く場合、本当に変化を測ったのか、プログラムが原因だと言えるのかを確認します。終了後のアンケートだけなら、「参加者は終了後のアンケートで自信があると回答した」のように、観察した内容へ表現を絞る必要があります。誰が何に回答したのかという説明も欠かせません。

これは単なる英文添削ではなく、根拠と主張を合わせる作業です。共著者の間で意味を確認してから、語彙や文法を整えます。文章が説得力を増すほど、元の根拠を超えていないか慎重に見る必要があります。

国際学会で英語による研究発表と質疑応答を行う様子

学会発表には、原稿のない練習も入れる

発表原稿では説明の順序を自分で決められますが、質疑応答では相手が問いを出します。定義を求める質問、比較方法への疑問、別の解釈を示す質問を受ける練習が役立ちます。

同じ研究を30秒、2分、5分で説明してみてください。どの長さにも、研究上の問い、主な結果、限界を残します。長い版では背景や方法を補い、結論が後ろへ埋もれないようにします。

聞き手に要点を言い返してもらい、自分の根拠より強い結論として伝わっていないか確かめます。「その点は今回検証していません」と正確に答えることも、研究を説明する力の一部です。具体的な表現は学会での英語質疑応答の準備で扱っています。

共同研究を支える、日常的な確認の英語

共同研究には、専門的な議論に加えて、担当、期限、修正範囲、未決定事項を確認するやり取りがあります。メールの練習でも、難しい表現を増やすより、相手が次に何をすればよいかを明確にします。

例えば「金曜日までに方法の節を直せます。報告するデータセットを確認していただけますか。合意するまでは結果を変更しません」という内容なら、担当する作業、期限、確認事項、保留する範囲が分かります。これは練習用の例ですが、自分の仕事に置き換えて書くことができます。

英語による負担を示す研究にも、適用範囲がある

Ramírez-Castañeda(2020)は、博士号取得者または博士課程在籍者であるコロンビアの生物科学研究者49人を調査しました。英語で論文を準備する際の執筆時間や費用など、追加の負担が報告されています。ただし、時間は回答者の自己申告です。すべての国や分野の研究者に同じ負担がかかると測定した研究ではありません。

Amanoら(2016)は別の問題を示しています。16言語で検索した2014年刊行の生物多様性保全に関する75,513件の文献のうち、35.6%が英語以外でした。これは特定分野・期間・検索方法による結果であり、科学全体の割合ではありません。それでも、必要な知識がすべて英語で見つかるという前提を見直す理由になります。

前者は英語で研究活動に参加する負担、後者は他言語の知識を検索から外す問題です。英語を教えるだけで両方が解決するわけではありません。

支援を研究活動の中に組み込む

学習では実際の要旨、方法の説明、想定質問、共同研究者へのメールを使います。意図する意味を確かめ、表現を直し、読み手や聞き手がどう理解したかを確認します。

研究チームや機関では、校閲支援、発表練習の時間、多言語の要旨、必要な非英語文献を含める調査計画などを検討できます。UNESCOの2021年オープンサイエンス勧告も、多言語の科学知識を対象に含めています。これは政策上の考え方であり、支援がすでにどこでも実現しているという意味ではありません。

目標は、研究の貢献と限界を保ったまま、相手が正確に評価できる形で伝えることです。そのために必要な英語と、周囲が提供できる支援の両方を考えます。

実際の発表と質疑応答を練習する

研究内容に沿って、説明の構成と英語表現を確認します。

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参考文献

  1. Ramírez-Castañeda, V. (2020). コロンビアの生物科学研究者が英語出版で経験する負担の調査. PLOS ONE, 15(9), e0238372.
  2. Amano, T., González-Varo, J. P., & Sutherland, W. J. (2016). Languages Are Still a Major Barrier to Global Science. PLOS Biology, 14(12), e2000933.
  3. UNESCO (2021). Recommendation on Open Science.

本文の練習例と支援案は、これらの研究で効果が検証された指導法として紹介するものではありません。